セキュリティゲート導入でテナントの契約率が満床に。 社内の反対を変えたイニシャルコスト削減とシステムの柔軟性


NTT都市開発株式会社 開発本部 開発推進部 担当部長 川久保愛太 様 NTTアーバンバリューサポート株式会社 九州事業部 建築設備担当 仲山隆人 様
- 利用機能
- 連携サービス/ツール
- 導入背景
- 従来の物件と差異化できる要素を模索
- 一定の企業はセキュリティゲートを重視することを想定
- セキュリティゲート導入に伴い採算が合う方法を模索
博多イーストテラスは、2019年から実施されている博多駅周辺の都市開発計画でさらなる街の発展に期待が高まるワンフロア面積680坪超のオフィスビルです。NTTグループの先端技術を導入し、博多では珍しいセキュリティゲートを導入しています。今回は、セキュリティゲート導入に至るまでの背景や、その入退館運用方法としてAcallのビルDXシステム「ゲートチェックイン」導入の決め手や運用についてお話を伺いました。
従来の物件と差異化できる要素を模索
一定の企業はセキュリティゲートを重視することを見込んだ
Acall導入の背景を教えてください。
博多駅博多口のエリアは大規模な再開発が積極的に行われており、大きなビルが数多く建っている中で、当初裏口といわれていた筑紫口のエリアは再開発の進捗が遅れていることが課題でした。
筑紫口は同じ博多駅であってもあまり評価されなかった中で、新しく作ろうとする高規格オフィスビルにおいて従来の物件と差異化できる要素はないか、というところを模索していました。
博多駅は、新幹線の利用者にとっては非常に利便性が高く、福岡空港からも2駅で来られるという特性があり、空港から5駅かかる天神駅よりも使いやすいといえます。
そのため、博多駅の近くのビルは、東京や大阪に本社を構えている企業が2拠点目、3拠点目として利用しやすいのではないか、という仮説を立てました。
従来、建物内にセキュリティゲートがなく、皆がシームレスに入れる形式が福岡の文化だと言われていました。そのような中で、天神のトップビルのみがセキュリティゲートを導入し始めた時期に、博多に今後作るビルにおいてもセキュリティゲートを用いたビルがあっても良いのではないか、と考えたのです。
東京ではすでにセキュリティゾーンを必要とする企業が多く、様々なオフィスビルにおいてセキュリティゲートは当たり前のように導入されています。博多イーストテラスが竣工する頃には、東京や大阪の企業が博多に進出することを検討した際に、セキュリティゲートがある点を重要視して選定する流れになるのではないかと考え、いち早くそのニーズを商品企画に入れ込みました。
オフィスビルに設置されたセキュリティゲート。Acallの「ゲートチェックイン」が採用されている。
必要なお客様が1割であってもニーズに応えることで差異化を狙う
セキュリティゲートについて、社内からはどんな声がありましたか?
博多ではシームレスに入れるということに価値があり、当初は営業メンバーから「セキュリティゲートがあることがデメリットになる」と強くいわれていました。賃貸オフィスビルにおいては、「8割のお客様に満足していただく80点」を狙うことが大切だとされているからです。
しかし私たちは今後セキュリティに関する基準が厳しくなる中で、1割〜2割ほどのお客様にとっては、セキュリティゲートが必須になる世界が来るのではないか、と考えました。
「絶対にセキュリティゲートがあるビルでなければならない」と言ってくださるお客様が例え1割であってもそのニーズに応えよう、それによって差異化が図れるのではないか、という思いがありました。
セキュリティゲート導入はイニシャルコストが課題
採算が合う方法を模索した
将来を見越した先進的な取り組みだったのですね。
しかしその一方で、コスト面において不安がありました。セキュリティゲートを導入している建物の特徴としては、5万平米以上程度の超大規模大ビルであり、大きな収益が期待できる傾向にあります。博多イーストテラスは超大規模ではなく大型ビルなので、既存のセキュリティゲートを導入する場合は採算に合わない点がデメリットでした。どのような形であれば、地方の超大規模ではない大型ビルにセキュリティゲートが導入できるのか、正直手探りの部分もありました。
現在の契約率はほぼ満床。大手企業が多くを占める結果に
実際にセキュリティゲートを導入してみて、テナント様の反応はいかがでしたか?
割合としては、想像していたとおり、第2拠点、第3拠点として選ばれる大手の企業様が多くを占める結果となりました。
リーシング期間中はコロナ禍ということもあり、セキュリティゲートを導入することによって招いたお客様のみがフロアに入ることができ、それ以外の方は事前に1階でお断りできるような体制もお客様に訴求できる商品企画のひとつでもありました。
2022年8月の竣工時点での契約率は9割、竣工して1年半たった現在の契約率はほぼ満床という形になっています。
近年の不動産においては、竣工時点で契約率9割は少ない傾向にあるため、そういった観点からはお客様のニーズに応えられたのではないか、と思っています。
[ テナント企業・トランスコスモス様の声 ]
来訪いただくお客様に対して、セキュリティゲートを通過するためのQRコードを発行しています。業種柄、情報管理は非常に重要な項目です。ビルにセキュリティゲートが導入されていることで、お客様に安心いただく環境構築に役立っています。
博多イーストテラスに入居しているテナント企業様:トランスコスモス株式会社 CXスクエア博多東 グループ長 林田一也様
セキュリティゲートが不要になった時でも柔軟に対応できる
大成功ということですね。セキュリティゲートを導入する、という商品企画を考えた当初はどのような方法でビルの入館を運用する予定でしたか?
営業チームからは「セキュリティゲートをつけないでほしい」といわれていたため、当初はつけない方向で考えていました。
最後まで議論して、つける方向に舵を切りましたが、その場合は大手のセキュリティ担当者さんに大きなイニシャルコストをかけてシステムを作っていただくことになります。
イニシャルでシステムを導入した場合には大体15年ほどで改修が必要になるため、費用対効果が課題でした。
もしセキュリティゲートをとろう、ということになった際には、イニシャルを捨てることになってしまうため、イニシャルコストをかけずに、システムも新しくなっていくようなモデルを採用した方が良いのではないか、という話になりました。
クラウド型であることが決め手に
安価に抑えることができ、柔軟性高く進化するシステム
Acallの「ゲートチェックイン」を選んだ決め手はどのような点でしたか?
クラウド型のゲート機能は珍しく、安価に抑えることができた点が大きな決め手です。
私たち不動産会社側からすると、イニシャルコストで大きなシステムを導入し、それを減価償却しながら10年後にまた一大投資が必要になるというようなコストモデルを負担できるビルは非常に限られてしまいます。
コスト面において、5万平米以上でないとセキュリティゲートはつけられないといわれていましたが、Acallの料金体系やユーザーの利用状況に応じた課金システムは既存の大きなベンダーとは異なる新たなサービス事業モデルであり、この金額帯は「Acallならでは」だと感じました。
機能面においても、個人的にはセキュリティとはいえど、大々的なシステムは必要なく、Acallのようなクラウドのシステムを含めて、スマートフォンやタブレットとカメラさえあれば管理できるのではないかと考えていました。今は紙を発行する方法で運用していますが、ペーパーレス化も進んでいますし、将来的には紙を印刷することもなくしていければと思っております。
いずれは入館に際して紙を印刷することはなくなるとは思いますが、それにはシステムの進化が求められます。
使う側が進化すると同時に、システム側も進化しないといけません。柔軟性が高く進化するシステムを提供できる点も、Acallさんを選んだ決め手のひとつです。
セキュリティゲートを通過する様子
お客様が使いやすいオペレーション構築に注力
導入や運用に際して苦労されたことはありますか?
今回は新築のビルである博多イーストテラスへの導入になりましたが、「どのようなルートでお客様がどのように入場するのか」ということに関して多くのパターンを想定しました。
無人管理の博多イーストテラスにおいては、入館に際してお客様ご自身の判断と理解が求められます。実際に運用可能なのかということについて、多くの時間をかけて丁寧に調整していきました。
超大規模ビルであれば、警備員と有人受付で困っていらっしゃる方へのご案内サービスが利用可能ですが、ビルの規模が小さくなると人件費が嵩むためそのような形式は困難です。そのため、無人管理という形式を採用することになりますが、その中でもお客様がある程度自己判断の中で入館できるようなオペレーションを構築できるのかは、本プロジェクトにおけるひとつのチャレンジでした。
運用当初はいろいろありましたが、管理側にもだんだんとノウハウが身に付いてきて、お客様にも入館方法について認識していただけるようになりました。
2年経つ頃においては、皆様がスムーズにご利用いただける、そういった運用に進化していっているのではないかと思っております。
豊富な選択肢が魅力
あらゆる入居テナント企業様ごとにカスタマイズすることができた
実際に導入してみて、いかがでしたか?
導入後、魅力的だと感じた点が3点あります。
博多イーストテラスには10数社テナント様が入居されていますが、皆様が同じAcallのシステムを利用しており、入居テナント様ごとに求めるセキュリティレベルは異なります。
例えば、定期的に来訪される社外の方に向け、ひとつのQRコードで一定期間入館できるようにしたい、というテナント様がいらっしゃいましたが、一定期間繰り返し来場する方に向けた「繰り返し設定機能」で対応することができました。入館時間を1分単位で設定できる機能も好評です。入居テナント様ごとに求めるセキュリティレベルにカスタマイズして対応できる点が魅力のひとつです。
2点目は、社外の方が急に来られた際に入館を許可するかどうか選択できることや、来訪者の方がQRコードを忘れてしまった場合でも数字コードを用いて入館するという選択肢がある点です。
社外の方が来訪された場合は、来訪者様に1階のエントランスに設置しているQR発券機を操作いただくと、テナント様の代表番号が表示されます。その代表番号宛に電話をすると、テナント様がその電話を受け取り、入館を許可するのであればAcallのシステム上からテナント様にてQRコードを発行し、同時に数字コードが発行されます。発行された数字コードを来訪者様へ電話口でお伝えし、来訪者様にて発行した数字コードを受付機で入力すると、QRコードが発券され、そのQRコードをかざして入館できるシステムになっており、入館方法の選択肢がある点も魅力的です。
また3点目として、博多イーストテラスの竣工とAcallのシステムを運用開始させていただいた2022年はコロナ禍にありました。Acallのシステムはテナント様のお迎えや入館カードの受け渡しに行かなくとも、入館ができるようなシステムであるため、非接触での入館が可能であり、テナント様にとって安心できる環境だったと感じています。
(写真右)NTT都市開発株式会社 開発本部 開発推進部 担当部長 川久保愛太 様(写真左)NTTアーバンバリューサポート株式会社 九州事業部 建築設備担当 仲山隆人 様
警備における人件費削減を実現
ビル管理者として安心して利用できる
ありがとうございます。人件費の削減や業務効率化においても効果はありましたか?
ビル管理者目線として、警備にかかるランニングコストを削減しつつ、安全なビル環境を構築することができていると感じております。ビル関係者以外の入館を遮断するためには、有人受付や立哨が必要となりますが、Acallのシステムとセキュリティゲートを連動させることにより、ビル関係者以外がテナント様の入居フロアに入館することができないため、有人受付や立哨警備は設けなくとも安全なビル環境を構築することができています。
Acallのシステムを運用するにあたっては、入居テナント様のアカウントにてQRコードの発行やエントランスの発券機の表示内容を編集することができるため、ビルの管理者の稼働をあまり割くこと無く運用することができています。
運用開始時には、各テナント様へシステム内容の説明が必要でしたが、運用を軌道に乗せるためのサポートとして、テナント様向けのマニュアルをAcall社に作成いただき、円滑に運用を開始することができました。
システムに関する問い合わせ対応についても、Acall社のカスタマーサポートの体制が充実しており、スピーディーに対応いただける点も大変助かっています。
セキュリティにエラーが生じた際の緊急時の駆けつけ体制も構築されているため、ビル管理者として安心して利用させていただいております。
東京や大阪に本社を構えている企業が入るビルにおすすめ
今後導入を検討している企業へのアドバイスはありますか?
今回博多イーストテラスにはセキュリティ意識の高いテナント様が入居されています。Acallの導入でテナント様が独自で入館の通知や入館者のログが確認できるという機能も、入居の決め手になった要因のひとつだと考えています。
Acallは安価かつクラウド型で不要な場合は解約することもできるため、高い賃料が取れないビルに導入しやすい強みがありますよね。
東京や大阪に本社を構えているセキュリティ重視の企業が、支店を出す時にとても役立つサービスだと思います。
それ以外にも、東京や名古屋、大阪でもセキュリティゲートの導入の判断に迷う規模のビルがあると思いますが、軌道優先でセキュリティをそこまで重要視していないテナント様が入居する規模感のビルに対して、セキュリティゲートを導入する際にもAcallは適していると感じました。
博多イーストテラス外観